Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞



【フィヒテ賞(第二部門)】

清水 満氏

――受賞対象著作――
  • 『フィヒテの社会哲学』(九州大学出版会、2013年)
――受賞理由――
 本著作は、フィヒテの道徳、法、国家にかかわるテキストを万遍なく扱い、フィヒテの社会哲学の全体を、可能な限り包括的にかつ客観的に描き出した労作として非常に高く評価できる。その論述には発展という視点も含まれ、フィヒテの社会哲学に「自由による自由の自己制限」と「相互作用」という原理が首尾一貫して認められることを重視し、それを多くの二次文献を使用することで研究史を踏まえ独自性をもって説いている。また筆者は、カントやヘーゲルとの関係も詳しく検討しており、フィヒテの社会哲学の仕事を思想史の中に位置づけることに成功している。さらには、現代のナショナリズム論、中世都市論、教育論など関連する議論への目配りも、本書の内容を豊かなものにしている。個々の論述において、フィヒテの所説に対する通説を斥け、それぞれのテキストにおいて彼が何を云わんとしたかを慎重に見極めようとしていることも高く評価されるべきである。
 以上の諸点を踏まえ、この労作を日本におけるフィヒテ研究におけるエポックメーキングな研究書として、2014年度日本フィヒテ協会フィヒテ賞を清水満氏に授与することに決定した。